芸能人の闘病などで、口腔がんという病気が以前よりよく知られるようになりました。実際に、歯科医院では、以前に比べて口内炎やお口の中の傷、解剖学的には問題のない形状であっても、口腔がんが心配といって受診される方がふえました。では、注意すべき口内炎とはどのようなものでしょうか。
今回は、歯茎にできる口内炎についてご説明いたします。
口内炎ができる場所はどこ?
口内炎がよく出る場所といえば、頬の裏側や舌の側面が多いです。
そのため、歯茎に初めて口内炎ができた方は、これって何かの病気かも!?と驚いてしまうかもしれません。
しかし、口内炎とは、字のごとく「お口の中の炎症」であって、歯茎にも舌にも同様にできるものです。歯茎にできたからといって、すぐに心配をする必要はありません。
歯茎にできる口内炎の種類とその原因
歯茎にできる口内炎には、さまざまな原因があります。
では、お悩みの多いものから順にご紹介いたします。
・アフタ性口内炎
アフタというのは、円形の口内炎で、真ん中にくぼみやえぐれた様な陥没した形状をしています。そのため、食べ物がぶつかったり、刺激の強い飲み物がしみます。
くぼみの周囲には白から黄白色の色をしており、大きさは5㎜程度です。
一般的な口内炎といえば、アフタ性口内炎ですが、その原因は睡眠不足や、栄養の偏り、歯磨きのし忘れや風邪など体調不良など様々です。
・ウィルス性の口内炎
口内炎の中には、感染性のものがあります。
その代表的なものは真菌の1種であるカンジタと、ウィルスであるヘルペスです。
・口腔カンジタ症
カンジタというのは、健康な人のお口にもいつも住んでいるカビ(真菌)の一種です。カビというと、とても汚いもののように感じるかもしれません。
常在菌(いつも住んでいる菌)ですので、通常は特にお口の環境に悪さをしません。
カンジダ性口内炎の特徴は、色は白が多く、苔のようにべっとりとしたものがお口の粘膜に張り付いたような形状です。基本的には白色で痛みはありませんが、同じカンジタ症であっても、お口の粘膜に斑点状に赤い発疹のようにでるカンジタ症は、痛みが強くでます。
では、カンジタ症による口内炎はどのような原因で起こるでしょうか。お口の菌のバランスが崩れた時に、カンジタ菌が増殖することによっておこります。そのため、引き金となるのは体調不良など免疫が低下した際です。
・口腔ヘルペス
口腔ヘルペスの原因となる1型ヘルペスウィルスには、日本人の9割近くが保有していると言われています。
「保有」とあえてお伝えしたのは、このウィルスは一度かかると、三叉神経という大きな神経の根元に住み続ける為です。
ヘルペスウィルスには、3歳前後までに親や子供同士の接触で感染するため、口腔ヘルペスの初発は子供の時代が多いです。
症状は、歯茎や唇に小さな水ぶくれ(水疱)が密集したようにできます。
その周辺は赤くただれていて、痛みも強く、子供の場合には発熱を伴うケースがあります。そのため、以前は「風邪の華」とも呼ばれていました。
ヘルペス性の口内炎は、カンジタ症同様に、免疫力が落ちると悪さをするウィルスです。
歯茎に口内炎ができた時にやるべきこと
歯茎に口内炎ができても、仕事が忙しい、大事なテストがあって休めないなどすぐには歯科医院にいけない時があります。
お口の中にある口内炎を悪化させないために、まずすべきことをご説明いたします。
・ホームケア
歯ブラシが当たると痛いので、歯磨きをするのが不安と感じるかもしれませんが、お口の中を清潔に保つことが大切です。
お口の中を、清潔にしていないと細菌が増殖し、感染しやすい環境をつくってしまい、悪化の原因になりかねません。
歯ブラシの他に、うがい薬などを活用し口腔内の清潔を心がけましょう。口腔内を常に清潔に保つことは、日常的な口内炎の予防にも効果的ですので、ぜひ習慣化してみてください。
歯ブラシの他にも、硬いものを噛んでいるときや、刺激の強い香辛料たっぷりのカレーや、エスニック料理、炭酸飲料やかんきつ類なども口内炎には刺激になります。今ある口内炎に刺激を与えないことが大切です。
刺激の少ない食べ物や飲み物をとることは、ご説明しましたが、大切なのは栄養バランスの取れた食事です。
口内炎の原因は、栄養バランスの偏りも大きな原因となります。
粘膜は、常に新しいものへとターンオーバーしていますが、そのサイクルに大切なのは、ビタミンB群です。ビタミンBは、納豆や牛乳といった日常的に取りやすい食べ物にも多く含まれているので、積極的にとる習慣を持ちましょう。また、サプリメントなどでもビタミンB群を含むものが多いので、栄養が偏りがちな方は、利用することをおすすめします。
・プロフェッショナルケア
口内炎はどこの診療科を受診したらいいの?とお悩みの場合には、歯科医院や耳鼻咽喉科にいってみましょう。
特に、お薬を塗ることで早く治る口内炎には、先ほどご説明したカンジタ症や口腔ヘルペスがあります。
カンジタ症の場合には、痛みやかゆみがないので、気にならない・・となりそうですが、病院へ行き、抗真菌薬の処方を受けましょう。
そのまま放置していると、お口の中に白いカビが広がってしまいます。
抗真菌薬は、ドラッグストアなどで市販をしていないため、処方を受ける必要があります。
口腔ヘルペスの場合は、歯茎に出ている場合には、水泡の周囲に発赤があり、腫れや強い痛みがあります。痛みは、しびれるように痛いというほどに強く感じる方もいらっしゃいます。また、このウィルスの感染力はとても強いので、家族間での食器やタオルの共有は、症状が出ている際には避けた方がよいでしょう。
ヘルペスのお薬は、ドラッグストアでは、薬剤師在中の時間帯であれば購入することができますが、歯茎など口腔粘膜への塗布ができないものもあるため、歯科医院や耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。
歯茎にできる口内炎ではない病気
歯茎にできる病気の中には、先にご説明した口内炎以外のものも複数あります。
こちらも、一般的にお悩みの多い順からご説明します。
・瘻孔(ろうこう)
サイナストラクトとも言います。
これは、歯の根っこの先端が位置するあたりに、小さな、にきびのような穴ができる症状です。
この原因は、歯茎にあるのではなく、歯にあります。歯の神経が死んでしまい、歯の根っこの中が感染した菌でいっぱいになると、歯茎を突き破って膿が出てきます。この突き破った穴が瘻孔ですので、歯の治療を行わなければ歯茎にできた瘻孔は治りません。
・エプーリス
プクッと歯と歯の間の歯茎にできものができることがあります。口腔がんなど悪いものを心配される方も多いですが、これは良性腫瘍です。
気になる場合には切除をすることもできますし、妊娠中にできる妊娠性エプーリスは出産後に自然と消失します。
・歯肉がん
口内炎の症状が強いと、心配が大きくなるのは歯肉がんです。
歯肉がんは、専門家が見なければ、初めは通常の口内炎との違いは分かりにくいかと思います。
口内炎との大きな差は、どんどん大きくなっていくことや、歯茎からの出血が増えることが症状として挙げられます。
普通の口内炎よりも治りにくい、悪化していると感じた際には、口腔外科を専門としている歯科医院や、耳鼻咽喉科を受診しましょう。
まとめ
芸能人が口腔がんで闘病したことにより、口内炎を見つけると、口腔がんなどを心配なさる方が増えました。
しかし、一般的な口内炎は、それほど心配はいりません。
お口の中を清潔に保ち、栄養バランスのとれた食事や休息をしっかりとることで自然と治っていきます。
その他に、カンジタ症や口腔ヘルペスによる口内炎もありますが、早めに歯科医院や耳鼻咽喉科を受診しお薬の処方を受けましょう。